密教秘術のコラム〈第2回〉密教秘術加持祈祷ってなに?
密教の特徴として、加持祈祷(かじきとう)などの儀式的要素があげられます。願いごと成就のための祈祷や、霊障除去のための修法などがそれです。
加持祈祷をほどこす者は、仏と一体になるため、『三密』と呼ばれる密教独特の行を使います。ひとつめは手を使って印を結ぶ身密、ふたつめは真言(マントラ)を唱える口密、みっつめは仏と一体になることを念ずる意密です。密教の教えである「人と仏は同じである」ことを知るために、音や体や意識をかけて祈念するのです。ここで大切なのは、願をかける人が一緒に力を合わせること。加持祈祷は一方的に仏に頼るためのものではありません。先にも述べました通り、仏と人の力が相乗してはじめて、ご利益がもたらされるのです。
しかし、こういった行為は、煩悩を捨てて悟りを得るといった仏教の教えとは異なります。ではどうして密教だけが加持祈祷を重要視しているのでしょうか?『加持』という言葉は、『加』仏の力が人びとの心に映ることと、『持』人がその光を感じることから成っています。つまり、密教の祈祷では、仏と人の力がお互いに影響し合って大きな力を生み出すのです。そしてそれは、「人間にはもともと仏が宿っている」という密教の教えとも結びつけることができます。人間は、仏とひとつであり、生きながら仏の境地に至ることができるのです。
密教は、人間として生きながら自らの内に眠る仏を呼び覚まし、よりよく生きるためのヒントを与えてくれるのです。