私の霊能力エピソード超降神術超降神術・涼風(すずかぜ)霊能者
母の大きくて温かいお腹。時々ポコッと動く不思議なお腹。目を閉じると今でもあの感触がまざまざと甦ってきます。それは私が初めて霊能力を発揮したものだからでしょう。「ここには男の子がいるよ。お尻の横に大きな痣があるよ。髪の毛がいっぱい生えてるの」
まだ妊婦健診にエコーなど使われていない時代。生まれてみるまで性別はわかりませんでした。でも、4才の私にはすべてわかったのです。今赤ちゃんがお腹を蹴った。今、指しゃぶりをしている。今ちょうどお昼寝から覚めたところ……。
その霊能力は、出産後ももっぱら弟を対象に発揮されました。「もうすぐ健ちゃんが起きる」「健ちゃん、おしっこしたよ」「健ちゃんおなか空いたって言ってるよ」私には生まれたばかりの弟、健治の気持ちがすべてわかったのです。健治の気持ちを代弁するのは、私の重要な役目で、彼が2才頃になって自分の欲求をきちんと言えるようになるまで続きました。
健治がしゃべれるようになると、私の霊能力は家族や幼稚園の友達などへと向きました。「みっちゃん、今日の帰り道転んでけがしちゃうよ。気をつけてね」「こうちゃんちのパパ、今日すごく遅く帰ってくるけど、心配しないでも大丈夫だよ」
私の予知能力は幼稚園で評判となり、地元の新聞が取材に来たほどです。その新聞記者にも、名前を聞く前から「おじさん、林さんっていうんでしょ?」「こっちのおじさんちには赤ちゃんが二人いるね」などと言い当て、記者を驚愕させました。
しかし、その記事が新聞に掲載されることはありませんでした。父が「この子の霊能力を目当てに、悪い奴らに狙われたら大変だ」と言い、急きょ記事を差し替えてもらったのです。
しかし噂は広まるもので、父の不安は的中してしまいました。
私が公園で遊んでいると、中年男性の二人組がやってきたのです。彼らは新聞紙を広げ、こんなことを言いました。「ほら、この馬たちの名前を見てごらん。どれが一等賞になるか、お嬢ちゃんならわかるよね?」私が黙っていると、彼らは人形やケーキを取り出し、私の気を引こうとしました。きっと新聞をじっと見つめれば、競馬の順位はわかったでしょう。でも、彼らの醸し出す胡散臭い雰囲気が、私に答えるのを拒ませました。「なんで言わないんだ!教えろ!さもないと痛い目に遭うぞ!」彼らの一人が胸ポケットからナイフを取り出しました。「キャー、ママァー!」私が走り去ろうとするのと、その男がナイフを奮うのとは同時でした。私は血が噴き出した腕を押さえ、泣きながら家に帰りました。
この事件に青ざめた両親は引っ越しを決意し、新しい街では決して予知など、不思議な霊能力を見せないようにと固く念を押されました。私はナイフで刺された恐怖が忘れられなかったものの、明らかにケガをする、よくないことが起こるとわかっているのに、黙っているのは非常に苦痛でした。それでも、両親の言いつけを守り、高校を卒業するまで他人に自分の霊能力を知られないようにしようと決めたのです。
中学生になった頃から、私はもう自分の霊能力を隠しておくのがつらくなりました。そしてある日、霊能力でわかったことをどうしても黙っておけない出来事が起こったのです。
いわゆるヤンキーと呼ばれるようなグループがあり、彼らが夜の学校に忍び込んでガラスを割ることが予知できました。私は先生にそれを話し、予知だと言っても信じてもらえないため、こっそり聞いてしまったことにしたのです。先生たちは監視に回り、彼らの陰謀は未然に防げました。
しかし、職員室で私が先生に話していたのを、ヤンキーグループのリーダーに話した生徒がいたのです。私は「ヤキを入れる」と称して、ボコボコに殴られました。しかも、その最後にカッターで顔を切られたのです。
小さい頃の腕の傷、そして、中学時代の顔の傷。どちらもいまだに消えません。それでも、私は霊能力を正しい方向へ使っていくのだという誇りと目標があります。これらの傷は「名誉の負傷」だと考えています。