密教秘術のコラム〈第8回〉密教秘術霊能者が行う祈祷術について
私は長年、電話占いでお客様を鑑定してまいりました。
当初は霊視や霊感で得た情報を基に適切な助言をさせていただき、それによって悩み事の解決を図っておりました。そうした基本的な鑑定スタンスは今も変わらないのですが、それに加えて最近では願望を成就させたり、状況を改善させたりする目的で祈祷術や呪術を執り行って欲しいと依頼される方が急増しており、こちらも必然的に対応せざるを得なくなりました。
電話占いの祈祷術は元々、修験者や密教行者、陰陽師など一部の霊能者が執り行ってきたものですが、いつの間にか霊能鑑定師としての必須能力として扱われるようになりました。たしかに巷間の祈祷師や行者の祈祷を受けるとなれば、それなりの金額を用意しなくてはなりません。また、実力のある祈祷師や行者を探すのにも苦労するでしょう。地域によってはそうした特殊な仕事を生業とする人物自体がほとんどいない、という事情もあり、料金も含めて手軽に祈祷を依頼できる電話占いに人気が集まるのも当たり前と言えば、当たり前のことなのかもしれません。
ちなみに私の場合、祈祷術を修するに当たって、知人の紹介を得て東北在住の有名な密教行者の教えを請いました。霊能のプロを自認する者の身を以てしても必要な呪法の修得には3年余りを有し、その間は毎週末に飛行機で現地へ赴く生活を続けて参りました。霊能者として電話占いの仕事を始めた当初は、まさか自分が新たに誰かの弟子入りをして、霊能術の修行をし直すことになるとは思いませんでした。人生は死ぬまでが修行と申しますがまさにその通りで、霊能術の世界も極めれば果てがないものなのだということをつくづくと思い知らされました。
皆様の中には、短い時間の中で電話越しに執り行う祈祷術に果たしていかほどの効果があるのか、と疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。実際に電話占いの鑑定を受けて、その際に祈祷を依頼されたことがあるお客様はご存知かと思いますが、霊能者は全ての祈願に対して、すぐにその場で祈祷術や呪術を執り行うというわけではありません。心身を安らがせる効果のある波動修正の術や比較的簡単に執り行える開運祈祷、あるいは開運のまじないなどを除けば、大抵の場合、鑑定中には祈願内容をお預かりし、後日にきちんとした形で充分な時間を遣って祈祷を執り行うというのが通例です。
密教の加持祈祷にしても、陰陽道の霊符術にしても、やはり正式に執り行うとなれば祭壇を設えてそこで作法に則った儀式をする必要があります。仮に鑑定中にそれをするとなれば鑑定時間は数時間を要することになってしまうので、能率的でないばかりかお客様の負担もとんでもない金額に跳ね上がってしまいます。ですから、電話占いの鑑定を受ければ、どのような願い事でもその場ですぐに祈祷してもらえて、効果も速攻で現れるという考えは間違いです。
また祈祷術に関しては、さらにひとつ申し上げたいこともあります。それは、決して祈祷の力にだけ頼ってはいけない、ということです。つまるところ祈祷術とは神仏に祈るという形を借りて、人間が持つ念のエネルギーを最大限に増幅させて、目的とする事柄の成就を図るという霊的技術です。そこでの祈願する主体は霊能者ではなく、あくまでお客様自身なのです。ですから、実力のある霊能者に祈祷してもらったからそれで必ず事が成就するというわけではなく、その際はお客様自身も成就したい事柄に対して強い念の力を振り向け続ける必要があります。祈祷術とはあくまで術者と依頼者の二人三脚の力で成り立つものである、ということをどうか心の片隅にでもお留め置きくだされば幸いです。